昇る朝日
私は、生まれた環境を受け入れそこで最大限に生きる〝樹〟に畏敬の念を抱いています。過去のトピックスでも多くの大樹を紹介してきました。
山口県に所用があり、その後に2本の〝樹〟に会おうと下関に宿を取りました。そのホテルの窓の景色が上の写真です。松の木の向こうに二つの朝日が輝いています。不思議ですね~
実はこの写真、「窓から見た景色」ではなく「窓に映った景色」なのです。この窓全体がゆるく湾曲しており、1枚づつ角度が変わった鏡になっていたのです。面白い写真が撮れました。
〝樹〟の生きる力
1本目の樹は、下関市豊浦町の天を覆いつくすように枝を広げる一本の樟(クス)の大樹。まるで森のように見えることから「クスの森」と呼ばれています。日本三大樟樹の一つとされており、「新日本名木百選」にも選ばれています。
樹齢は約1000年、主幹の地上5メートルあたりから18本の大枝が四方へと伸び、最長の枝は約27メートルにも及びます。しかも、大枝のうち2本は、一度幹から折れた枝が地上に落ち、再び根を出し、葉を茂らせるという強い生命力を見せています。
多くの大枝が幹の途中から分かれた独特な姿と旺盛な樹勢から、伝説上の大蛇「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」のようだとも言われています。
2本目の樹は、下関市豊北町にある恩徳寺の「結びイブキ」。推定樹齢450年、幹周2.9mあり、イブキとしては大木です。
枝を結び合わせたようなイブキ、その奇形には驚かせられました。「結びイブキ」と言うのは “枝を結び合わせたイブキ” と言う意味でした。
イブキは幹や枝が曲がりくねり、荒々しい樹形になりやすい樹木だそうですが、このような特異な樹形のイブキは極めて珍しく貴重だそうで、国の天然記念物に指定されています。
イブキは別名ビャクシン(柏槇)ともよばれ、厳しい環境でも耐え、荒々しい姿の古木も数多く、そのようなビャクシンは禅の心に通じるとして、禅宗の寺に多く植えられているそうです。
恩徳寺のイブキも複雑に絡み合う枝には空洞ができ、樹皮も剥げ落ち、ほとんど枯れているように見えますが、生き延びたわずかの枝には緑の葉を付け、イブキ特有の白い実も結び、しぶとく必死で生きています。
このイブキを姿形が珍しい奇樹としてでなく、禅の心にも通じる希樹としてみると、感慨深く感じました。